平成17 ~ 19 年度文部科学省科学研究費補助金(基盤研究(C))研究(課題番号17520395)
研究成果報告書
「外国語(英語)教員研修実態調査に基づくLSP 教員養成・研修システム開発」
Development of the LSP teacher education system based on a Survey on the Foreign Languages (English) Teacher Education in Japan
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成果報告書埼玉医科大学 笹島茂
sasajima@saitama-med.ac.jp
■ 本研究の概要■
本研究は、欧米等ではほぼ定着しているLSP (Languages for Specific Purposes)(明確あるいは
特定目的のための言語)教育の理念と方法(Howard & Brown, 1997; Dudley-Evans & St. John,
1998 など) をわが国の外国語(主に英語)教員養成と研修に導入するための先進的なシステム
を構築しようと意図するものである。
主に次の4つの観点にもとづく質的研究の実施
1)英国(イングランドとスコットランド)の教員研修に関する実態調査等を、文献、インタ
ビュー、観察等の質的調査を通じて実施し、その特徴を明らかにしようと意図した。
2)アンケート調査による外国語教員の意識調査を英国と日本で行い、日本の中等教育の英語教
員の養成や研修に対する意識の特徴を明らかにしようと意図した。
3)それと同時に 各地で工夫されている教員研修の実態調査を、文献、インタビュー、授業観察
等により明らかにしようと意図した。
4)さらに、アンケート等の調査結果をもとに、LSP 及びCLIL に注目し、その実態とニーズに
関して質的調査を進めた。
アンケート調査によって明らかになった日本の中学校英語教員の意識
• 実用的な英語力指導の重要性を認識
• 「 外国語の知識と技能」と「授業の知識と技能」の両方が必要
• 教育全般の活動を重視
• 現職研修に至る過程や内容に関しての要望
• ESP、仕事などに関連した指導よりも基礎基本の重視
• CLIL に対する低い関心
• 研修内容にLSP (ESP) 導入の意欲
• 中等教育の教育者としての強い意識
• 外国語教員の専門性は「外国語の知識と技能」と「授業の知識と技能」から構成
• 外国語指導に関連する研修機会の増加
• 約半数が他教科の教員との違いを意識
• 様々な学習者や分野に対応した外国語教員養成と研修の必要性に共通理解
調査に基づくLSP 教員養成・研修システム試案の提言
• LSP 教員養成・研修システムの理念:
LSP (Languages for Specific Purposes) 教員とは、学習者の求める外国語ニーズを基盤として、
学習者のために明確な目標を設定して、学習計画を作成し、学習の場面、活動、教材などを選択
し、学習の機会を与え、支援し、診断し、評価できる教員である。主に、専門分野や仕事に特化
した外国語指導に携わるが、必ずしも高等教育や成人教育に限ることなく、場合によっては初等
中等教育においても対応できる資質を要する。たとえば、スポーツや芸術活動などに必要な言語
能力、数学や理科等の教科内容の理解に必要な言語能力、海外生活に必要な言語能力など。LSP
教員の養成と研修は、上記のLSP 教員を育成し、その専門性を高めるために実施されるプログ
ラムである。
• LSP 教員養成・研修システムの目標
LSP 教員の養成と研修の目標は、中学校や高等学校の英語教員養成や研修の現行システムにか
かわる人的資源と施設・設備を利用して、知識と技能を共有し、様々な分野や仕事に必要な外国
語指導者を育成し支援することにある。
• LSP 教員養成・研修システムのスタンダード
上記の理念と目標のもとに、LSP 教員としてのスタンダードを下記のように設定する。ここで
言うスタンダードとは、「養成や研修で修得する専門的知識や技能の基準のことで、養成や研修
の各段階や場面において、LSP 教員として資質を身につけているかの目安」とする。
スタンダード 1:外国語の知識と技能
スタンダード 2:外国語授業運営の知識と技能
スタンダード 3:学習者の外国語学習目標の明確化
スタンダード 4:学習者の外国語学習ニーズに沿ったカリキュラム設計と評価
スタンダード 5:学習者の学習履歴の把握と学習方法の支援
スタンダード 6:学習段階、科目内容、分野、仕事などのディスコースコミュニティの理解
スタンダード 7:教育目標、学校文化の理解と外国語教育の専門性
スタンダード 8:外国語使用のジャンル(場面や社会文化など)に対する理解
スタンダード 9:初等教育から高等教育まで系統的外国語教育理解
スタンダード10:評価測定方法に関する知識と技能
このLSP 教員養成・研修システムのスタンダードを目安として、それぞれに具体的な知識と技
能に関する内容や活動を含んだモジュールを設定し、スタンダードを満たしているかを評価する。
さらに、総合的な資質の向上を目指した学習指導実習(従来の教育実習と異なり、授業指導の知
識や技能に焦点をあてた内容)を設けた。
今後の研究
本研究が提案したLSP 教員養成・研修のモデルは、現行の日本の中等教員養成と研修のシステ
ムを基盤とする。ここで提案したシステムが機能するかどうかは今後の検証にかかっている。本
研究の提案するモデルの推進に向けてさらに検証と改善を実施する予定である。